「瑕疵担保責任」は消える
2020年に改正民法が施行されるのはご存知でしょうか。この改正によって、売買契約における売主の担保責任の規定も変わります。 現行民法では売主の責任として「瑕疵担保責任」が規定されていましたが、これに関する規定は改正によって削除されます。
■新しく規定される「契約不適合責任」
そして、改正民法施行後に新しく売主が負うことになる担保責任は、「契約不適合責任」と呼ばれるものです。 この責任を一言で説明すると、「売った商品が売買契約の内容に合っていない物であった場合に売主が負う責任」ということになります。
例えば、コップを100個売るという契約だったのに買主が90個しか受け取っていなかった場合(数量の不足)や、白いテーブルを注文したのに黒いテーブルが届いた場合(種類違い)、当然ちゃんと動くつもりで買ったラジコンが壊れていた場合(品質の問題)など、「契約に合っていない」物を売った場合に売主はこの責任を負うのです。
当然ながら、契約の内容と合わなかったことについて買主の方に責任がある場合は、売主は契約不適合責任を負うことはありません。
■どのような責任?
気になるのはその「契約不適合責任」の具体的な内容ですね。それは大まかに以下の①〜④の4つです。
①買主から契約を解除される
買主は催告をした上で、売買契約を解除することができます。また、契約に適合した商品を提供することが不可能であるとき等の一定の場合には、買主は催告なしに解除することができます。
②損害賠償金を支払う
買主が損害を負った場合に、損害賠償を請求される可能性があります。ただし、売主が損害賠償責任を負うのは、売主に過失がある場合に限られます。
つまり、売主がきちんと注意を払ったにも関わらず商品が壊れてしまっていたような場合には、損害賠償金を支払わずに済むのです。
③足りない部分を追完する
買主から請求があった場合に、契約の内容に合わなかった商品を交換したり、数量が不足していた場合は不足分を引き渡したり、または壊れていた商品を修理したりする責任です。これも原則として、買主が指定した方法で追完することになります。
ただし、買主の負担にならなければ、指定された方法以外の方法で追完することも可能です。
④代金を減額する
買主から請求があった場合に、商品の不適合の程度に応じて売買代金を減額することになります。買主はいつでも代金減殺請求ができるわけではありません。代金減殺請求ができる場面は以下の場合に限られています。
- ③の追完請求をしてしばらく経ったのに、売主が追完しない場合
- そもそも追完が不可能な場合
- 売主が追完を拒絶している場合
など、追完が見込めない場合のみ、代金減殺請求ができるのです。
以上が契約不適合責任の内容です。
■消滅時効がある!
ただ、この責任にも消滅時効があります。商品の種類・品質について問題があった場合は、買主が問題のあることを知ってから1年以内に売主に通知しなければ、買主は上の①〜④の請求ができなくなります。
また、商品の数量について問題があった場合は、買主が権利を行使できると知った時から5年、または客観的に権利を行使できる時から10年のどちらかが経過すると、買主は①〜④の権利を行使できなくなります。
まとめ
従来の瑕疵担保責任に比べ、③の追完請求や④の減額請求が認められることになったことにより、より柔軟な経済活動が可能になると思われます。
より実効性を持たせるためきちんと契約書を整備することも重要となってくるでしょう!