1 はじめに
「無期契約社員」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは労働法の改正に伴って生まれた言葉で、新しいタイプの契約社員です。
事業主であれば、「そのようなタイプの契約社員はうちにはいない」と言ってのんきに構えていてはいけません。有期契約社員が無期契約社員に転換する可能性もあるのです。
この記事では、無期契約社員の概要と、有期が無期になるための条件などについて説明します。
2 無期契約社員の概要と条件
●「無期契約社員」とは?
「無期契約社員」とは読んで字のごとく、雇用期間が定まっていない契約社員のことです。
無期契約社員になった従業員は、多くの場合、ずっと同じ雇用主の下で働くことができるのです。
しかし当然のことながら、正社員とは立場が異なります。無期であってもあくまで契約社員なので、正社員と同じ福利厚生や賞与が受けられるわけではありません。
有期契約社員が無期契約社員になった場合は、特に定めない限り、雇用期間以外の労働条件は有期の時の労働条件が引き継がれるのです。
●有期が無期になるための条件
有期契約社員が、通算5年以上、契約を更新しながら同じ雇用主の下で働いている場合は、その社員は雇用主に申し込むことによって無期契約社員になることができます。
正確には契約社員に限らず、派遣社員やパートなど正社員以外のほとんどの労働者は、この申込みによって労働契約を有期から無期に転換することができるのです。
3 雇用者側が注意すべきポイント
では、無期契約社員に関連して、雇用主はどういった点に注意すればよいのでしょうか。
●無期転換は禁止できない
雇用主は、有期契約社員の「契約を無期に転換したい」という申請を禁止できません。
労働契約の中でこの申込みを禁止したとしても、その禁止は無効となります。
●理由のない解雇は無効になる可能性が高い
無期に転換できるのは、有期契約社員として「5年以上」働いている場合に限ります。
そのため、無期に転換されたくない雇用主は、5年経つ前に契約を打ち切りにしようとするかもしれません。
しかし、理由のない解雇は無効です。
また、契約更新の拒否もできないことが多いのです。同じ契約社員について何度も契約を更新し続けている場合などは、理由もなく急に契約更新を拒否することはできないとされています。
「長く働いている有期契約社員は無期契約社員になる可能性が高い」、と思っておきましょう。
4 さいごに
無期契約社員になると、有期の場合よりも解雇が難しくなります。しかし、長く働いていて信頼できる契約社員が、形式上も「無期契約社員」となり、雇用主が安定した労働力を確保できるというメリットもあります。
また、有期契約社員が無期契約社員になった場合、雇用主である事業主に補助金が出ることもあります(キャリアアップ助成金)。
社員も事業主も、新しい制度を上手く使ってwin-winの関係を築いていきたいものです。