1 はじめに
昨今はインターネット通販の普及もあり、医薬品の広告を目にすることが多くなりました。
しかしそれに伴い、他の類似する医薬品との差別化を図って誇大な表現を広告に用いる販売者も増え、これに関する消費者の相談も増加していたのです。
そうした現状を受け、平成29年に改正されたのが厚生労働省の医薬品等適正広告基準です。
この記事では、この基準の概要を改めて確認していきます。
(医薬部外品や化粧品も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の規制対象ではありますが、この記事では主に医薬品の規制について書いています。)
2 「広告」とは?
そもそも、この基準が適用される「広告」とはどの範囲のものをいうのでしょうか。
以下の3つを全て満たす表現は、医薬品の「広告」であるとして医薬品等適正広告基準が適用されます。
●顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること。
●特定(医薬品等)の商品名が明らかにされていること。
●一般人が認知できる状態であること。
テレビやチラシ、インターネット広告以外の表現でも「広告」に当てはまることがあります。口頭説明でも広告に当たる可能性があるので、気をつけましょう。
3 医薬品等適正広告基準の概要
以下で、この広告基準の定める内容を簡単に説明します。
●医薬品の名称
法律によって承認または認証が求められている医薬品の名称を使っている場合、それ以外の名称を使ってはならない。
承認が必要でない医薬品の名称を使っている場合、届出をした名称以外の名称を使ってはならない。
● 製造方法
実際の製造方法と異なる製造方法の表現をしてはならない。
●効能効果、性能及び安全性
効能効果については、承認が必要な効能効果はその承認の範囲を、承認を要しない効能効果については、医学上認められる効能効果の範囲を超えて表現してはならない。
成分や原材料、安全性、用量用法についても、医学上認められる範囲を超えて表現してはならない。また、誤解を招くような不正確な表現をしてはならない。
●消費促進
薬の濫用を促すような表現をしてはならない。
● 医療用医薬品
医師向けに販売される医薬品について、一般向けの広告を出してはならない。
●一般向け広告における効能の表現
一般的に医師にかからなければ治療が難しい病気について、その医薬品を使えば治ると思わせるような表現をしてはならない。
● 習慣性医薬品について
特に法律で規定された医薬品(習慣性があるもの)については、習慣性があることを付記しなければならない。
●使用及び取扱い上の注意
使用及び取扱い上の注意喚起が必要な医薬品については、その内容を付記しなければならない。
●他社製品の誹謗中傷の禁止
効能や安全性などについて、他社製品を誹謗中傷してはならない。
●医療関係者の推薦
医療関係者、薬局、病院、学会や公務所など、人々の認識に大きく影響を与える者から推薦があった旨を広告に記載してはならない。
●懸賞などによる広告の制限
過剰な懸賞や賞品など射幸心を煽る方法による広告をしてはならない。
●不快や恐怖を与える表現の取扱い
広告を見た人に不快感や恐怖、不安、迷惑を与えるような広告をしてはならない。
●テレビ、ラジオの広告の取扱い
テレビ、ラジオなどの出演者が特定の医薬品の品質や効能、安全性について言及してはならない。
●医薬品の他の用法について
医薬品が他の用途(食用や化粧用など)に使えることを強調して消費者の安易な使用を助長してはならない。
4 さいごに
医薬品の広告基準は、かなり細かく定められていることがわかったかと思います。
医薬品を商品として取り扱おうと考えている事業主の方は、その説明の表現には他の商品よりも一層気をつけるようにしましょう。
医薬品の広告について、基準を満たしているかどうかわからず不安のある方は、一度行政書士にご相談ください。