1 はじめに
日本に長く住んでいる外国人の方の中には、日本に帰化したいと思っている人も多くいます。
帰化するためにはどのような手続を踏めばよいのでしょうか。また、雇っている外国人が帰化するとき、雇用主としてはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
2 帰化の条件
そもそも「帰化」とは、外国人が法務大臣の許可によって日本国籍を取得することです。
法務大臣の許可を得るためには、一定の条件を全て満たさなければなりません。
以下①~⑥は最低限満たさなければならない条件ですが、これを全て満たしたとしても許可されないこともあります。
①正当な在留資格をもって、5年以上引き続き日本に住んでいること
②年齢が20歳以上で、自国の法律でも成人年齢になっていること
③素行が善良であること(犯罪歴、納税状況、社会的に迷惑な行動の有無など)
④生活に困らない収入があること(帰化申請者本人だけでなく、生計を一つにする親族をひとまとまりとして判断されます)
⑤日本国籍を取得したら、自国の国籍を失うこと(自分の意思で国籍を喪失できない場合は、この条件が免除されることもあります)
⑥暴力による日本政府の破壊を主張するような団体に所属していないこと
日本国民であった者の子(養子は除く)や、日本で生まれた者、引き続き10年以上日本に住んでいる者であれば、上の条件が緩くなる場合もあります。詳しくは当事務所までご相談ください。
3 帰化の手続
帰化申請は、申請者本人が近くの法務局・地方法務局へ出向いて窓口へ書類を提出する形で行います。
国籍取得という重大な手続ですので、必要書類も多いです。最低限、以下の書類が必要になります。
①帰化許可申請書(申請者の顔写真添付)
②親族の概要を記載した書類
③帰化の動機書
④履歴書
⑤生計の概要を記載した書類
⑥事業の概要を記載した書類(給与所得者であれば不要)
⑦住民票の写し
⑧国籍を証明する書類(本国の行政官庁が発行したもの)
⑨親族関係を証明する書類(本国の行政官庁が発行したもの)
⑩納税を証明する書類(生計を同じくする同居者全員分)
⑪収入を証明する書類(生計を同じくする同居者全員分)
⑫在留歴を証する書類
覚えておきたいのは、これら1項目につき1枚の書類で足りるわけではないということです。同居者の人数や申請者の職業、生計の状況などによっては、これら全部で数百枚もの枚数に上ることがあります。
さらに、申請者の国籍や職業によっては他の書類も提出するよう求められることがあります。
4 雇用主が注意すべきこと
帰化手続に際しては、雇用主が従業員である申請者の給与証明書や源泉徴収票といった書類を発行する必要が出てきます。
また、外国人雇用を届出ていたハローワークへの届出や、帰化に伴い氏名が変わった場合には各種保険の氏名変更の届出も行う必要があります。
こうした手続をできるだけ迅速に行うためにも、帰化の許可が出たらすぐに知らせるよう、雇用主は申請者に前もって指示しておきましょう。
5 さいごに
ここまで読んでいただいてわかったように、帰化の申請は大変な手続です。申請後も許可が出るまでは半年~1年ほど待つことになります。帰化申請をしたいけど忙しいという方は、手続のプロである行政書士にご相談いただけますと手間が省け、時間を節約することもできます。
また、申請者本人もそうですが、雇用主などの関係者も各種手続が必要になりますので、申請状況については互に逐一報告・確認するようにしましょう。