1 はじめに
民泊新法が施行され、自宅や別荘の一部で民泊の営業を始めた方もいるでしょう。
外国人観光客が増えている昨今、うまくいけば、空き物件から利益を得ることができますが、その利益の課税関係について考えたことはあるでしょうか?
民泊で得た利益にも当然、所得税が課税されるのですが、これは所得税のうちどの区分に当てはまるのでしょうか。
2 事業所得or雑所得or不動産所得!?
民泊を営業して得た所得は、事業所得、雑所得、または不動産所得のいずれかに当たります。
では、これらのうちどれに当たるかをどのように判別すればよいのでしょうか。
⑴事業所得に当たる?
まず、民泊を「事業として」営んでいる場合には、そこから得られる利益は事業所得に分類されます。
「事業」に当たるかどうかは結局は社会通念によって判断されるため、その基準は曖昧です。
しかし少なくとも、民泊の営業だけで生計を立てている場合は「事業」に当たるといえるでしょう。
一応、基準を示しておきますと、
①自分の責任で独立して行われていて
②利益を目的としている
③継続的な活動
である場合には、事業に当たると言われています。
事業所得に当たる場合は、民泊で生じた赤字は損益通算することができます。
⑵事業所得でない場合は?
民泊の営業が「事業」に当たらない場合は、得られる利益は原則として雑所得に分類されます。
ただし、例外があります。
日頃から不動産賃貸業を営んでいる人が、賃貸物件が空いている期間だけ民泊として貸し出す場合には、その利益を不動産所得に含めてもOKとされています。
雑所得でなく不動産所得に含めるメリットは、不動産所得であれば損益通算することができるということです。
3 必要経費に入れられるのは?
事業所得、雑所得、不動産所得のいずれであっても、その所得金額は総収入金額から必要経費を差し引くことで求められます。
所得金額が高いほど税額も高くなるので、必要経費に含められるものはできるだけ全て含めて差し引くようにしましょう。
では、民泊の営業について必要経費として認められるのは、どういった支出でしょうか。
国税庁が紹介している具体例として以下のものが挙げられます。
・ 住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料
・ 住宅宿泊管理業者等に支払う管理費用や広告宣伝費
・ 水道光熱費*
・ 通信費*
・ 非常用照明器具の購入・設置費用
・ 宿泊者用のアメニティや食器など、日用品の購入費
・ 住宅宿泊事業に利用している家屋の減価償却費*
・ 固定資産税*
・ 住宅宿泊事業用資金の借入金利子
一般常識で考えて、民泊を営業するために必要となる支出や、事業を効率的に進めるための支出は、全て必要経費に含まれるということになります。
「これはさすがに必要経費には入らないだろうな~」と思っていても、意外と含まれることもあるので、迷ったら領収書は全て保管しておきましょう。
(*は、民泊の営業と事業者自身の生活の両方に関連しうる支出です。こうした支出については、民泊の営業に関する部分のみが必要経費として認められます。)
4 さいごに
以上、民泊で得た利益の課税上の扱いについて概略を説明してきました。
しかし、所得の区分も必要経費の算入可否も、事実関係を詳細に検討して判断することになるので、自分で判断するのはかなり難しいのです。
確定申告で迷うことがあったら、早めに専門家に相談するようにしましょう。