1 はじめに
ビルや住宅を貸し出している大家さんにとって、賃貸物件を長く借りてくれる借家人の存在は有り難いものです。
しかし、長い間にわたって貸していると、地価の変動など様々な事情によって家賃の相場が変わってくることもありえます。
この記事では、そうした場合にどうやったら賃料を上げることができるのかについて説明します。
2 当事者の合意があれば早い
賃貸借契約を結んだときに、「毎月の家賃は○○円」と決めたのですから、これを変更するには原則としてお互いの合意が必要となります。
大家さんが「賃料を上げたいのですが」と言って、借家人が「はい、わかりました」と返事をしてくれれば、話は早いです。
あとは家賃改定合意書を作成し、お互いが署名すれば賃料増額完了です。
しかし、そうカンタンにはいきません。
当たり前ですが、ほとんどの場合、借家人は増額に合意しないのです。
3 賃料増額請求→調停・調停委員会の利用
しかし、合意が得られない場合でも賃料増額できることがあります。
爆発的なインフレといった大きな経済事情の変動や、相場と比較した場合に家賃が格安になってしまっているといった事情がある場合には、賃貸人は賃料の増額を請求することができるのです。
この請求を受けて当事者同士が賃料増額についての話合いをもちますが、上手くまとまることは少ないでしょう。
そうなると次は「調停」を行うことになります。
調停で話がまとまって調書が作成されると、その調書に記載された金額が賃料となります。
その後で改めて裁判をすることはできませんので、不満があるようでしたらまだ調書を作ってはいけません。
調停において当事者の話合いがまとまらないときは、「調停委員会の決定に任せましょう」という合意をすることができます。
その場合は調停委員会が適正とする賃料を決め、当事者はそれに従うことになります。
4 裁判
こうした調停の手続でまとまらなければ、今度は訴訟を提起して裁判所に適正な賃料を判断してもらうことになります。
裁判という手続は時間がかかり、訴訟の提起から判決が出るまでは何ヶ月も要するのが一般的です。
その間の家賃については、ほとんどの場合、賃借人はそれまで支払って来たのと同じ額の家賃を支払うことになります。
その額では少なすぎたということが判決で明らかになった場合は、その不足分に利息をつけて後から支払うことになるのです。
5 さいごに
賃料増額の手続について説明してきましたが、このような手続を踏んで賃料が上げられることはほとんどないと思っておきましょう。
先に挙げたような爆発的なインフレなど、ほとんど起こることがありません。
また、もともとの家賃が相場よりかなり低いといったことも滅多にないでしょう。
もし特殊な事情があって、家賃が増額できるのではないかと考えている大家さんがいらしたら、まず行政書士に相談してみてください。