はじめに
金銭の貸し借りをするとき、離婚に際して養育費の支払を約束するときなど、重要な取り決めをする場面で公正証書を作成することがあります。
しかし、この公正証書をどういった場面で使うかについては知らない人が多いのではないでしょうか。
この記事では、公正証書を使った強制執行の可否や方法について説明します。
公正証書で強制執行ができる!
結論から言うと、公正証書を使って強制執行ができる場合があるのです。
「強制執行」とは、その名のとおり強制的に債権を回収する方法です。
相手の財産を差押えて競売にかけ、その対価の金銭を受け取ることで債権を回収するのです。
しかし、強制執行ができるのは「強制執行認諾文言」がついた公正証書に限ります。つまり、「債務者が公正証書に記載された債務を履行しない場合は、すぐに強制執行を行うことに同意します」という意味の文言が書かれた公正証書でなければ強制執行はできないのです。
公正証書を使って強制執行をする方法
では、実際に公正証書を使って強制執行を行うには具体的にどのような手続を踏めばよいのでしょうか。以下で説明します。
1 公正証書を作成した公証役場で、公証人から相手方に対して公正証書の謄本を送ってもらいます
(公正証書を作成した時点で送達を行ってしまうことも多いです。既に送達しているかどうか確認しましょう。)
2 相手方に謄本が届いた後、公証役場で送達証明書(相手方に謄本が到達したことを公証人が証明する文書)を受け取ります
3 公正証書を作成した公証役場で執行文の付与を請求します
執行文とは、公正証書正本の最後に書き加える「強制執行しても良い」という意味の文言のことです。
執行文の付与の請求が認められると、執行文の書き加えられた公正証書正本を受け取ることができます。
4 相手方の住所を管轄する地方裁判所で強制執行を申立てます
このとき提出する書類は、上述の送達証明書と執行文の付与された公正証書正本、そして差押命令申立書です。
また、公正証書に記載された当事者の氏名・住所が申立て時点のものと異なる場合には、戸籍謄本や住民票も必要になる場合があります。事前に裁判所に問い合わせて確認しましょう。
さいごに
注意していただきたいのですが、強制執行の申立てが認められて実際に差押え・競売を行っても、相手が何の財産も持っていなければ得られるものはありません。
これはとても難しいことですが、できることならば事前に相手の財産状況を確認したいところです。