1 はじめに
一般に、土地を取得した場合、そこに住宅を建てるかビルを建てるか、はたまた駐車場として整備するかは所有者が決めることができます(いずれの場合も、建築基準法等の法律が許す範囲内でのみ可能であることは言うまでもありません。)
しかし、取得した土地が農地である場合は違います。
農地であった場所に住宅を建てるなど、農地を潰して別の用途に使うとき(農地を転用するとき)は特別な許可が必要となるのです。
2 農地転用に許可が必要な理由
なぜ農地転用に許可が必要なのでしょうか。
それは、日本の食糧供給の基盤である農地を確保する必要性と、他の用途で土地を使いたいという要請とを調整する必要があるからです。
国土の小さい日本において農地を守っていくための工夫が、農地転用許可制度といえます。
3 許可が必要な場合
農地転用の許可が必要なのは以下の①②の場合です。
()内は、それぞれの場合について許可申請すべき人を表しています。
①農地を転用する場合(農地の所有者)
②農地を転用する目的で、その農地に権利を設定しまたは移転する場合(権利を設定・移転する人と、その権利を取得する人)
気をつけなければならないのは、農地の上に建物を建てるといった分かりやすい場合だけでなく、農地の状態はそのままにしてそこを駐車場や資材置き場として活用する場合も①の「転用」に当たるという点です。
4 許可申請の手続
農地転用許可申請の手続の大まかな流れは以下のとおりです。
農地の所有者や権利関係(抵当権などは設定されているかどうか)を改めて登記などで確認する
↓
農業委員会に事前に相談する。
このときに、自分の農地の種別(転用可能な農地かどうか)や、適用される法律・条例等に応じて申請にあたり必要となる書類を確認する。
↓
許可申請書等の必要書類を作成し、その他の必要書類を全て集め、申請する
申請に際しては、最低限、以下の書類が必要となります。
・ (申請者が法人の場合)定款の写し及び法人の登記事項証明書
・ 申請に係る土地の登記事項証明書
・ 申請に係る土地の地番を表示する図面
・ 転用候補地の位置及び周囲の状況を示す図面
・ 転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積、位置および施設間の距離を表示する図面
・ 転用事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面(預貯金通帳の写しなど)
・ (所有権以外の権原に基づく申請の場合)所有者の同意書
・ (耕作者がいる場合)耕作者の同意書
・ (転用に関連して他の法令の許認可等を得ている場合)その旨を証する書面
・ (申請に係る農地が土地改良区の地区内にある場合)当該土地改良区の意見書
・ (転用事業に関連して取水または排水につき、水利権者、漁業権者その他関係権利者の同意を得ている場合)その旨を証する書面
さらに、申請先の求めに応じて他の書類も提出しなければなりません。
5 さいごに
農地転用の手続は、うまくいけば6週間ほどで完了します。
しかし、農地の面積や位置などによって申請先や一部提出書類が異なるため、準備は想像しているより手間がかかるものです。
全て自分で準備しようとするのは大変ですし、提出書類に不備があれば、それだけ許可が出るのが遅くなってしまいます。
相続等によって得た農地の転用を考えている方は、転用できる農地なのか、申請先はどこなのかなどを簡単に確認するためにも、一度行政書士までご相談ください。