1 はじめに
監査等委員会設置会社も指名委員会等設置会社も「委員会」という組織を置く点で、一般的な株式会社とは異なっています。
では、これらはどのような会社形態なのでしょうか。
また、2つはどのように異なるのでしょうか。
2 指名委員会等設置会社
これは、ビジネスの国際化の流れに合わせ、アメリカの制度を参考に平成14年から導入された株式会社の形態です。
指名委員会等設置会社は、取締役会の中に指名委員会、報酬委員会、そして監査委員会という3つの委員会を置きます。
各委員会は3名以上の委員(全員が取締役。また過半数は社外取締役でなければならない)から成る組織で、それぞれ以下の役割を負っています。
・ 指名委員会…株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する。
・ 報酬委員会…執行役や取締役の個人別の報酬を決定する。
・ 監査委員会…執行役や取締役の職務の執行の監査し、監査報告を作成する。
また、指名委員会等設置会社は業務を執行する1人以上の執行役(ほとんどの場合は取締役から選ばれます。)を取締役会決議で選任しなければなりません。
3 監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社をより使いやすいように改良したのが監査等委員会設置会社という株式会社の形態です。
監査等委員会設置会社は、取締役会の中に監査等委員会を置きます。
監査等委員会は3名以上の監査等委員(全員が取締役。また過半数は社外取締役でなければならない)から成る組織で、以下の職務を行います。
・ 監査等委員でない取締役の職務の執行の監査し、監査報告を作成する
・ 株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・再任しないことに関する議案の内容を決定する
・ 監査等委員でない取締役の報酬や選任・解任・辞任について、株主総会で意見を述べる
一言で説明すると、監査等委員会設置会社には「監査等委員でない取締役」と「監査等委員である取締役」の2種類の取締役が存在し、前者が業務の執行、後者がその監査を担当するという構造になっているのです。
4 2つの会社形態の主な違い
この2つの主な違いは、
「監査等委員会設置会社には、指名委員会と報酬を置かなくてもよい(監査等委員会だけでよい)」
という点です。
指名委員会等設置会社があまり定着しなかった理由として、委員会を3つも置かなくてはならない、しかも過半数は社外取締役でなくてはならないという負担の重さがありました。
それを解消し、より設立しやすくしたのが監査等委員会設置会社というわけです。
5 さいごに
指名委員会等設置会社が全く増えていないのに対し、監査等委員会設置会社はその使いやすさから近年増加傾向にあります。
2018年には東証一部上場企業2102社のうち、513社が監査等委員会設置会社となりました(指名委員会等設置会社は60社)。
既に存在する株式会社も、定款を書き直すことによって監査等委員会設置会社とすることができます。
監査等委員会設置会社を設立するにあたって定款変更や登記手続について気になる点のある方は、ぜひ一度行政書士までご相談ください。