新東京行政書士事務所Blog

100%子会社同士の吸収合併に関する手続き及び注意点【法務から会計処理まで】

M&Aやグループ企業間の組織の変更に関する手続きとして、会社法に規定される会社合併を利用することがあります。本稿では100%子会社同士の吸収合併に関する手続きと、その注意点についてご紹介します。

①100%子会社同士の吸収合併の法務【注意点】

たとえば、A社の100%子会社B社とC社があるとして、B社とC社は合併をしたほうが業務効率が良いと判断できる場合があるとします。

この場合、B社とC社が吸収合併をすることが考えられます。

資本関係がない2社が合併すれば、それぞれの会社の株主をどのように取り扱うかということは重大な関心事です。

しかし、本稿のA社B社C社のようにA社を親会社とする資本関係がある中でB社とC社を合併しても、A社の持ち分比率が100%である点で変わるものではなく、企業の経済的実態には何らの変更もありません。

ですので、このような吸収合併を行う際には、合併される法人に対する株式の割り当てを行わない方法が実務上用いられます無対価合併といいます)。


無対価合併について

無対価合併とは、文字通り株式その他の資産を対価として交付しない合併の方法です。無対価合併は、主に「親会社が100%子会社を吸収合併するケース」または「100%子会社同士で合併するケース」で見られる種類の合併です。つまり無対価合併は、グループ内の再編などを目的に活用される手法です。

親会社が100%子会社を吸収合併する場合は、親会社側が子会社の全株式を保有しているため、親会社側が子会社側に自社株式を対価として交付するメリットがありません。一方で子会社同士が合併する場合も、グループ全体で見た場合の資産に変動はないため、対価の交付によるメリットは生じません。これら二つのケースでは対価を交付する必要がないため、合併の際に対価の交付を行わない場合が多々あります。

平成22年度の税制改正では、上記のようなケースを踏まえて無対価合併に関する法律上の取り扱いが明確に定められました。支配関係が「いずれか一方の法人による完全支配関係」のケースでは、合併直前に合併する側の会社が吸収される側の発行済株式等の全てを保有している関係の場合に、適格要件を満たす無対価合併となります。

一方で支配関係が「同一の者による完全支配関係」のケースでは、「同一の者が合併するそれぞれの会社の全発行済株式等を保有する関係」の場合などに適格要件を満たす無対価合併となります。なお適格無対価合併とは税制上の優遇措置を受けられる合併であり、要件を満たせば税負担が大幅に軽減します。

参考:【用語解説】無対価合併について
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/tax/articles/rt/no-consideration-merger.html

②100%子会社同士の無対価合併をする場合の会計処理【注意点】

会社法上、合併法人が合併に際して株式を発行していない場合には、資本金および準備金を増加させることは適当ではないと解されるため、消滅子会社の資本金及び資本準備金は「その他資本剰余金」として引き継ぎ、利益準備金は「その他利益剰余金」として引継ぎます(企業結合適用指針437-2)。

③100%子会社同士の無対価合併をする場合の税務【注意点】

吸収合併のような会社の組織再編行為について、一定の要件を満たすと税制上の優遇が受けられる税制メリットがあります(組織再編税制)。

その要件を満たして税制の優遇が受けられる吸収合併のことを適格合併と呼んでいます。

100%子会社同士の無対価合併が適格要件を満たすためには、「同一の者による支配関係がある」ことが必要で、大雑把に言うと

  1. 合併前に両者が同一の法人による支配関係があり、合併後もその会社に支配されいているといえること(法人税法施行令4条の3第2項2号)
  2. 無対価合併(法人税法2条12号の8)

の要件を満たす必要があります。

そのため、上記のA社の100%子会社であるB社C社の吸収合併をするときには適格合併となりますが、B社の100%子会社のD社とC社の100%子会社E社が合併する際には、親会社がD社とE社の親会社が同一といえないので適格合併とはならないという事になります。

④100%子会社同士の吸収合併の労務【注意点】

100%子会社同士で吸収合併を行う際には、税務面に加えて労務面(社会保険や労働保険)に関する手続きを行わなくてはいけません。

まず、社会保険に関する手続きを解説します。吸収合併により消滅する100%子会社側は、被保険者資格の喪失手続きを行います。具体的には社会保険事務所に対して、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(社員全員分)」と「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。一方で吸収合併により存続する100%子会社側は、消滅する会社から移動してくる全社員分の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。

参考資料:https://maonline.jp/articles/roumu1

次に労働保険に関する手続きを解説します。
吸収合併により消滅する100%子会社側では、原則所轄ハローワークに対して「雇用保険適用事業所廃止届」を提出します。ただし吸収合併の後も消滅する会社側の事業を継続する場合には「雇用保険事業主事務所各種変更届」を提出します。一方で吸収合併により存続する100%子会社側では、「新旧事業実態証明書」を管轄のハローワークに提出します。この証明書は存続する100%子会社側が消滅する会社側から事業の実態を承継している旨を証明する書類です。この書類を提出することで、被保険者一人一人に関して、個別で手続きする必要がなくなります。

最後に

本稿では、100%子会社の吸収合併についてお伝えしました。

100%子会社同士の合併の際には無対価合併を行うことがほとんどですが、会計の処理と税制のメリットを受けられるかという事項に注意が必要です。

法務・会計・税務すべてに関連する事項になりますので、専門家に必ず相談しながらすすめるようにしましょう。

2019/01/11 法務   auter_1
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