はじめに
取引先がお金を払ってくれない場合、第三者から損害を被った場合には「裁判に訴えて返してもらおう!」と誰もが考えると思います。
とはいえ、民事裁判をするにも印紙代や弁護士などの専門家に対して支払う費用など多額の費用負担が発生します。
では、どのような場合に裁判をしたほうが良いのか、逆にしないほうが良いのかを考えてみたいと思います。
裁判手続きによる救済の流れ
裁判により金銭的な救済を受ける場合の簡単な流れは以下の通りです。
まず、自らの主張内容を記載した内容証明を送ることが一般的です。(裁判の前にやれることをやったのかということは裁判になった時にも裁判官に見られる要素となります。)
【参考:https://youtu.be/wq7lwyjj4sI】
内容証明に返事がない、もしくは、その後の協議においても解決しなければ裁判(訴訟)の検討をすることになります。
検討の結果やむを得ず裁判を行い、勝訴判決が確定すると民事執行の手続きに入ります。
裁判に勝っただけで自動的に強制執行することはできず、別の手続きである執行裁判所に改めて申立てをして被告の財産を差し押さえます。
不動産や動産など競売にかけるようなものである場合には競売をして、代金から回収をすることになります。
裁判をするか否かの判断
上記のとおり、最終的な救済を受けるまでには多くのプロセスを経ることになります。
したがって、自ずとコストはかかり、それを一次的に負担するのは訴えを起こす側となりますので、最終的に救済が受けられない可能性も視野に入れて慎重な判断が必要となります。
回収可能性があるか
まず、裁判をするか否かは回収の可能性があるかどうかによって考えることになります。
裁判を行う場合、印紙代や切手代といった実費負担にあわせて、弁護士や司法書士など法律専門家を利用する場合には専門家への報酬もかかってきます。
そして、その費用は、当然ですが、相手方の親族も国も負担してくれることはありません。
相手方に自分の損失を救済できるだけの十分な資力がない場合には、絵に描いた餅のような勝訴判決と上記のような支払い債務だけが残ることになりますので、入念な調査が必要となります。
勝訴する見込み
次に裁判をして勝訴をする見込みがどのくらいあるかを検討します。
裁判とは、被告と原告がお互いに主張しあって、どちらの主張が確からしいかということを裁判官が判断するという手続きになります。
(しばしば、裁判はあたかも神様の目で見たかのような真実を発見する場のように勘違いされます。よく考えればわかりますが大きな勘違いです。)
したがって、「法律的な考え方として金銭を請求できる論拠があるか」、そして「それを裏付ける事実を証明するための客観的な証拠が十分にあるか」が重要となります。
上記を揃えられない場合、裁判に訴えたとしても返り討ちに合う可能性があります。
慎重な検討の必要があります。
その他の影響
ちなみに、ある程度の知名度がある個人/団体では、裁判の遂行自体には支障がない場合でも、裁判をすることがイメージダウンするような場合があります。
レピュテーションについては、いったん、低下すると改めてこれを回復することは困難ですので、裁判で得られるメリットと天秤にかけて検討する必要があります。
まとめ
巷では「訴えてやる!」という言葉が冗談半分でよく言われていますが、上記の通り実際に裁判を行う場合には多くの条件について検討、準備が必要となります。
一方で、最近は弁護士の数も増え、安易に裁判を勧めてくるケースも少なくないと聞きます。
(SNSの仕組みを応用した集団訴訟を促すサービスまで出てきているようです。)
裁判という事後的な解決策をとらないといけなくなった状況では、これを回復するための工数も多く、予想外の犠牲を伴うことになります。
やはり、できる限り紛争に巻き込まれないよう予防法務に努めることが重要です。
与信を十分に行い、リスクを軽減するためのきちんとした契約書を締結するなどをお勧めします。